イタリアンレストラン ラ・ボニータ
芸能人のレストラン
かつて「ラ・ボニータ」というイタリアンレストランが世田谷の祖師ヶ谷大蔵と川崎の鷺沼にあった。どちらも40席程度の小さなレストランでした。
私はそのレストランの統括マネージャーをしていました。
このレストランは木村拓哉さんのご両親の経営でした。
お父さんは店の電話番などをして裏方を手伝ってくれていました。
お母さんはご来店いただいたお客様が本当にご満足頂いているか知りたいとのことでご自身で接客サービスをしてお客様と会話したり、皿洗いやゴミ捨てまで手伝ってくれていました。
お客様のご満足だけではなく従業員が楽しく働きやすくするにはどうしたら良いかを常に考えてくれていました。
当時一般的なレストランの営業時間といえばラストオーダー時間が21:30で閉店時間が22:30or23:00でしたがラ・ボニータはラストオーダー20:00で閉店が21:00。なぜ?「スタッフの皆さんの帰りが遅くなるので」がお二人の言葉でした。
私は「そんなレストランはないですよ。ラストオーダー21:00でいいのでは」と進言しましたが「いいんですよ。それで」と笑っていました。
私自身、レストラン業界の経験があったためこのような発想は考えられませんでした。
当然、営業時間は売上にも直結しますし。。。
お客様やスタッフの事を常に考えてくれていました。
オープン当初、なぜか週刊誌、新聞等で「ビストロスマップ世田谷で」のタイトルで
木村拓哉さんの店が開店したとの情報が大きく流れました。
「ゆっくりとヒッソリと営業して行こう」と考えていた矢先に。
あっという間に店は満席!予約の電話は鳴りっぱなしでした。
日本国内のみならず中国、台湾、タイ、マレーシアからもたくさんのお客様が来店されました。
前述したようにお母さんはお客様ファーストで笑顔でのお声がけや「満足してますか?」と全てのテーブルを何度も廻りお礼を言ってました。
スタッフにもバックヤードで「大丈夫?疲れてない?」と気遣い。
開店当初のお客様は「キムタクの店」での来店目的でファンの方々ばかりでしたが次第
にファンの方だけでなくグルメな方、この店は誰の店かは全く気にしないしそもそも知
らないといったお客様も来店されるようになりました。
物件探し
ある日、2店目の出店の為、お父さんと私の二人で物件探しをしていました。
二人で弁当を買って木陰に車を止めて食べようとしていた時に突然、お父さんが「あっ
たー!」と大きな声で一言。
見上げると車を止めたその真横に「FOR RENT」の文字が雰囲気、広さなど私が計画し
ていたイメージぴったりで、尚且つ偶然にも砧店同様、近くに小学校があり、最寄り駅
から徒歩時間もほぼ砧店と同じロケーションで。
お父さんは即決!
かわいい雰囲気の砧店とは違い鷺沼店はコンクリート打ちっ放しの男性的な内装にした。
イタリア半島の形状そのままにしたカウンターにした点とテラス席を作って開放的な雰
囲気にしました。
コンセプト
この場所を選んだのは、この当時の人気雑誌HANAKOを片手にグルメブームをおうかし
ていた「ハナコ世代」が結婚して新興住宅地のマンションを購入して移り住んでいた女
性たちは青山や麻布で本物のイタリアンの味を知っているのでその層をターゲットに本
物のイタリア料理を提供する店とするためだった。
狙いは当たった!
改装工事期間に広告を行い、認知度を上げていたせいかオープン当初から満席となる。
「ラ・ボニータ」という店名なのでファンの方々にも認知されてたくさんのお客様に来
店していただいた。
ターゲットを絞った戦略と商品のクオリティーを上げたことが集客につながっていると
のことで日本経済新聞にも取り上げられてレストラン関係の方々も様子をうかがいに来
店されるようになっていった。
まとめ
この話は20年以上前のことではあるが、今でもこの手法は重要なものです。
コンセプト作り
↓
ターゲット設定
(ペルソナを設定する 性別のみではなくキャラクターの好み、生活習慣など深掘りする)
↓
商品開発
(ターゲットの好み、量、価格、生活背景などを考慮する)
↓
販促方法
(そのターゲットに最短、最速で届くには何がベストか)
↓
集客
↓
顧客化(リピーターづくり)
これらを基本で進めていました。
もちろんキムタクファンの応援も大きかったと思っています。
今、レストラン業界がコロナの影響もあり苦しんでいます。
割引やクーポンなどのネット予約もコロナ以前の集客力ではなくなってしまっている。
Webで集客して席を埋めて売上を作る。集客が落ちたら媒体へ投資して集客するといっ
たサイクルが崩壊している。今まで割引やクーポンなど「安売り」を魅力としていたた
め本来の飲食店の顧客づくりが忘れられていたのではと思ってしまう。
Webでの集客→お店のファン化→リピーターといった流れが崩れてしまっている。
コロナ禍でコンスタントに集客出来ていたレストランはリピーターづくりの仕組みが出
来ていたので常連客が通っていた。
今こそ飲食店に必要なのはこのリピーターづくりのサイクルではないでしょうか。
「レストラン ラ・ボニータ」はキムタク目的のお客様ばかりだったのがキムタク関係なく集客できるようになったの徹底した「お客様ファーストの精神」がお店のファンを集め、「レストランのファン」として来店していただいていた。
お客様が行きたくなる店にする秘訣は徹底したお客様ファーストです。